お口ポカン(口呼吸)は危険のサイン!顔立ち、歯並び 、姿勢、また健全な成長発育への悪影響について
口呼吸は何故いけないといわれるのでしょうか?
一説によると日本人の実に8割以上が何らかの形で口呼吸をしていると言われています。また大人よりも成長期にある子供達への悪影響が最近ピックアップされています!
今全体の相当数の子供達が慢性的な鼻閉(鼻づまり)のため口呼吸になっていると言われています。
みるとお口は半開きで、いつもお口ポカンの状態。あなたのお子さんはいかがでしょうか?もしそうだとしたら要注意です!
もくじ
鼻呼吸と口呼吸の違いとは
本来、鼻は呼吸器(呼吸をする器官)で口は(食事をする器官)であるとされています。
鼻(鼻腔)は 1加湿器 2空気清浄機 3エアコン の3つの機能を果たしているとされています。
鼻呼吸をする場合、乾燥した外気が直接肺に入らないように鼻腔内に分泌される鼻水によって加湿されます。肺に到達する頃には湿度が約90%にまで加湿されています。口呼吸ではこれほど湿度を上げれないため乾燥した外気が体内に入り風邪やインフルエンザのリスクを高めます。つまり鼻呼吸は免疫機能の役割も果たしていると言えます。
また鼻腔内は外気中のホコリや細菌、ウイルスなどを捕獲して出来るだけきれいな空気を肺に送る機能も備わっています。口呼吸ではホコリや細菌、ウイルスが喉や気管に直撃してしまうため感染リスクが高くなります。
また鼻呼吸は冷たい外気を温めて肺に送ります。その温度は約36〜37度と言われています。
口呼吸では冷たい外気が扁桃腺、気管、肺に直接入るため肺の免疫機能も低下してしまうリスクが大きくなります。
(画像引用 武田薬報Web)
口呼吸のデメリット
歯並びが悪くなる
1 出っ歯になりやすくなる。
これはアメリカの動画です。口呼吸と歯列の乱れの関連を説明していますが、英語ですが視覚的に大変わかりやすいので見て下さい。その後解説を補足します。
唾を飲み込んで見ると嚥下する時には舌は上顎を上に押し上げる動きをします。人は1日に700〜1800回嚥下(飲み込み)動作を無意識に行なっています。口呼吸が習慣になってしまうと、舌が下がってきます。すると飲み込む時の力は上顎の骨ではなく前歯を前に押し出す力としてかかります。これが出っ歯の成り立ちの一つです。
さらに舌が低位に下がる事で、上顎の奥歯は内側からの支えを失い、頬の筋肉が歯を内側に押し込む事で臼歯が内側に移動してきます。
その結果上顎の歯列は逆 V字型の歯列になります。幅が狭くなると下顎や舌は前に出る事が出来なくなるため、後ろに後退します。また唇の周り筋肉(口輪筋)が弱くなって口を閉じる力が弱く上の前歯は前方に傾斜して出てきます。
これが日本人に一番多い出っ歯(上顎前突)の成り立ちです。
また上顎も下顎も歯列の幅が狭くなるので、殆どのケースで歯が並びきらない事が多く、ガタガタの歯並び(叢生そうせい、八重歯)にもなりやすくなります。
何故口呼吸になるのか?
アデノイドの問題
アデノイドとは咽頭扁桃と言って、上気道と咽頭の境目にある扁桃組織で3〜6歳ぐらいに肥大してくる事が多く、大きくなりすぎると鼻腔気道を閉鎖して鼻呼吸に障害が出てきます。子供の口呼吸の原因の一つです。
(出典 朝日新聞デジタル)
鼻疾患の問題
アデノイドはじめ、その他の鼻疾患、例えば鼻アレルギー鼻炎、鼻中隔湾曲、副鼻腔炎(蓄膿症)なども鼻閉を起こして口呼吸になる原因になります。
これは耳鼻科を受診して原疾患の治療を行う必要がある場合も多いです。
上顎骨の劣成長
また鼻閉による口呼吸が習慣化してしまうと奥歯がほっぺたの筋肉に押されて内側にはいって、上顎骨が十分に成長できなくなります。また上顎が成長できないとすぐ上にある鼻腔底も成長ができないので、空気の通り道の気道は狭いままになりますます鼻閉はひどくなり悪循環になってきます。
また上顎骨の成長は9歳までで8割終わると言われておりそれ以降はあまり成長が期待できなくなります。上顎骨の成長は特に中顔面(顔の真ん中あたり)に関連していて、劣成長は将来の顔の見た目にも関係してきます。
口呼吸が習慣になってしまうと
口呼吸が習慣になってしまうと顔貌(顔立ち)、姿勢に影響が及びます。
後述する「アデノイド顔貌」が代表的なもので、子供の頃鼻閉が原因で口呼吸になってしまい、大人になって鼻の疾患がなくなっていたとしても口呼吸は意識しないと治らない事が多いです。
いづれにしても口呼吸は重大な全身疾患に結びつくことが警鐘されているため、できるだけ早期に改善を図るべきだと思います。
口呼吸と顔の変形
口呼吸をしていると顔が歪む??
口呼吸が続くと口を閉じる筋肉(口輪筋)が緩み連動して頬筋や咀嚼筋の筋力が弱くなります。また歯並びの悪さからいつも同じ側(噛みやすい側)で噛む癖がつきやすく、また顔の表情筋も左右のバランスが取りづらくなるため左右の目の大きさが変わったり、口角の位置が左右で高さが変わったりすると言われています。
アデノイド顔貌
聞きなれない言葉かもしれませんが、口呼吸が習慣化すると特徴的な顔貌になる事が知られています。
2 顔が長い
3 口元が出ている
4 口を閉じると下顎の下に皺(しわ)ができる。(梅干しができる)
5 下顎が引っ込んでいる
6 二重顎になりやすい 7 唇がめくれあがって分厚い
8 鼻の下が長い
口呼吸と口臭の関連
口臭の最大の原因は?
口臭の最大の原因は口呼吸で口の中が乾燥して、唾液の殺菌機能が極端に落ちてしまう事です!
唾液は物凄い機能が備わっていて、食事後の酸性になった口の中を中和したり、外から侵入する雑菌、ウイルスを洗い流す、もしくは殺菌したり、消化を助ける酵素を出したり、口の中の傷ついた粘膜を修復したりしています。唾液が少なくなる状況が口の中で起こると、虫歯や歯周病が悪化したり、菌の急激な増殖が起こり口臭がひどくなります。
口呼吸と姿勢の関連
口呼吸をしていると猫背になる
鼻閉のため口呼吸になると下顎が後退するために呼吸が苦しくなるので気道を拡げるために自然に頭は後ろに沿ってかつ首は前に傾斜してきます。その結果姿勢はいわゆる猫背になってきます。
口呼吸と疾患の関連
イビキは身体からのSOSのサイン!
イビキは寝ている時に舌根が下がって気道を狭くするために起こります。アデノイド(咽頭扁桃)や口蓋扁桃の肥大が大きな原因と言われています。特にアデノイド咽頭扁桃が鼻呼吸の障害に直接関係していると言われています。
最近では口呼吸の子供のイビキが問題視されています。口呼吸が原因で下顎が後退してそれに伴って舌も後ろに下がってしまいます。この状態が長く続いたり、肥満があったりするとさらに呼吸系の悪循環が起こって、睡眠時無呼吸症候群と呼ばれる疾患に繋がってくる事があります。大人だけではなく子供にも起こります。
睡眠時無呼吸症候群との関連
睡眠時無呼吸症候群は大人だけではなく子供でもあります。この状態になると酸欠(酸素欠乏)の状態が毎晩続くために熟睡できなくなります。さらに問題は熟睡できないと成長期に大切な成長ホルモンが十分出なくなり低身長や低体重、情緒の不安定(イライラ、切れやすい など)が見られる事がある事が指摘されています。
まとめ
口呼吸は単に口から息をしているに過ぎないと思われがちですが、その影響は子供達にとって計り知れないものであると言えます。歯並びだけではなく、顔の形や姿勢、またさらには成長期の身体に大きな影響を及ぼす事態にもなりかねない事が、小児科ドクターや歯科ドクターはじめ、世界中の研究者からの報告、論文で様々な問題点が指摘され、警鐘が鳴らされています。大切な成長期に鼻呼吸を障害する原因をしっかりと調べ、必要があれば耳鼻科、小児科、歯科で治療を受ける事は本来必要のない疾患を回避して、その後の健やかな成長に導いてあげるためにも大切な事だと思います。
鼻から呼吸できる子供と口呼吸の子供は大人になってからも非常に大きな違いが出て来る可能性が大きい事を親御さんは認識してあげてほしいと願います。
歯科的なアプローチについては以下の記事を参照して下さい。
子供の矯正治療 本当に必要なのか。悪い歯並びの原因は?いつから始めればいいの?費用は?痛みとかの副作用はあるの? (顎顔面矯正をお勧めする理由とは!)